会社が一瞬でブラック化する話

 恐らく、多くの経営者は、自分の会社がブラック企業である自覚は少ない。
 悪い噂が急増したり、離職の連鎖など、相当な状況に進んで初めて気が付くケースが多いようです。

 数百人レベルの大企業でも、たった一名の人物の採用や昇進がきっかけで、全社的に急速なブラック化が進むケースもあるので、注意が必要です。

 たった一人の人間が、数百人の会社をブラック化することなどありえない?
 と考える人も多いと思います。

 実際に、どういう風に進むか解説します。

 きっかけは、一名の人物の採用または、昇進から始まる。
 条件は、複数名の部下、チームを持つ職位である必要がある。
 ありがちなのは、ヘッドハンティングなどで中途採用した有名企業出身者や、社内の猛烈社員が昇進する場合である。
 強烈な出世欲と「目的のために手段を選ばない」性質を併せ持つ人物であると危険性が増す。

  こうした人物(死のⅮ氏とする)は、最初の数年は抜群の成績を収める。

 その手法であるが、どんな仕事でも受けて、部下に無茶なノルマを課して、外注を利用させず、根性で社内消化することを要求する。教育などと称して残業代もつけさせない。
 顧客に対して、手抜きや隠ぺい、必要のない商品・サービス(増額)を提案したりとやりたい放題である。
 短期的な利益を上げるだけなら、手段を選ばなければいくらでも方法がある。

 同時に、病欠者や中途退職者が増えても、隠蔽するのも上手いので社内で問題にならない場合が多い。
 
 数百人規模以下の会社だとオーナー企業がほとんどで、数年続けて好成績を出すと、一気に昇進(課長部長クラス)してしまうケースがある。

 昇進後は、自分の取り巻きを作り、部下(係長)達に、自分と同じやり方をさせる。
 退職者や顧客クレーム急増が、経営幹部にバレた場合は、部下に責任をなすりつけ、人前では叱責しつつも、裏で庇ってやる。
 これで、Ⅾ氏の地位は安泰である。

 こうやって、社内でのし上がっていくⅮ氏を見た「他の部長達」は、通常のやり方では、勝てないと悟り、同じやり方を始める。
 そうやって、一気に会社全体がブラック化する。

 こういう感じの事態は、実際に起こっている。

 会社は、離職者、休職者が急増し、ネット上には、悪い評判が飛び交い、新規採用もままならず、顧客クレームも増大し、会社の業績が低迷という状況に陥り、その時点で、ようやく、経営トップが気が付くといった感じだ。
 
 しかし、もうこうなると、社内幹部が全員共犯者になっていて、コンプライアンス責任者が、さんざん悪事を働いていた張本人だったりする。
 そうなると、いくら呼びかけても、表向きやってる感を見せるだけで、本質的には改善されない。
 「囚人のジレンマ」というやつで、周りを信用できないので、何も行動できない状況に陥っている。
 
 実際、そんな感じになっている企業が多いと思う。
 
 バフェット(投資の神様)は、一度、不祥事を起こした会社は、二度と更生しないという信条の持ち主らしいが、アメリカは、まだ株主が強くて、悪事を働いた関係者を解雇できるからましだと思う。

 日本の場合、企業不祥事が起こっても、トップ辞任か、減給くらいで、悪事の実行者たちは、社内に残るので、経営改善は難しいと思う。

 こうした事態に陥る根本原因が、経営者が部下に結果だけ求めて、プロセスに関心を持たないことだ。
 結果だけ求めて、部下を怒ったり誉めたりするだけでよいなら、社長は楽だから、多くの、会社は、結果だけ求める経営になりやすい。

そうなると、各部署がブラックボックス化して、密室で悪事はやりたい放題になるのは時間の問題である。
 
 現実の社会には、「バレなければ何をしても大丈夫」と考える人は、いくらでもいるし、まともな同僚も、負けないために、そのやり方に染まらざる得ない。

 「組織寿命30年」などと言われるのは、こうしたメカニズムによるものだと思う。

 組織寿命を延ばすには、業務の見える可、可視化などが必須だが、組織全体が断固反対するケースが多い。

 また、社会全体として健全性を保つためには、ダメになった組織が消滅する仕組みが望ましいが、失業を最大の恐怖と捉える日本社会では、それも機能しない。

 行政も企業も、どこもブラックボックス化して、なおかつゾンビ化しているのが日本の現状と言えますね。

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