政策論争において財源論は必要か

 みなさん、もし、会社の経営会議における新事業提案時に「新事業を提案します。その財源は、○○部の収益と、△△部の社員をリストラして浮いたお金を使います」と、提案者に、その財源まで回答させる会社があったら、どうなると思いますか?

 勝手に収益を持っていかれる部と、リストラされる部の人達は、「俺たちに喧嘩売っているのか?」と激ギレしますよね。
 そして、提案は、100%実行不可能でしょう。

 もし、社内の提案者に、その財源まで回答を求める社長が居たら、外資だったら、即クビだと思います。
 一方、日本企業では、提案者に対して、財源を尋ねたり、既存の業務ノルマにプラスして「やりたければ、予算ゼロで自腹でやってね。」という会社が多数派です。
 「提案したら損する仕組み」なので、もっとよいやり方やビジネスがあっても、誰も声を上げず、どんどん経営が非効率になっていきます。

 同じように、日本の政策論争においても、提案者に対して、「その財源はどうするのか?」と回答を要求することがまかり通っています。
 そして、回答できないと「無責任」と騒ぎ、財源を回答すれば、既得権者が騒ぎといった感じで、「提案つぶし」でしかありません。

 そもそも、提案者が財源を回答することは技術的に不可能です。

 理由は、国の収入だけで見ても、一般会計と特別税、社会保険等に分かれ、さらに膨大な税種に細分化されており、誰もその詳細を把握できません。
 既存事業も各省庁に膨大な事業があり、それぞれの歴史と担当組織があり、そこの従事する人たちの生活もあり、既得権者がいます。
 そうした中で、巨大なブラックボックスを解明して、財源を回答することは技術的に不可能な上に、もし回答すれば既得権者が、猛反発します。

 現状の、政策提案時に、その財源論争をしていては、新しい政策は何もできないでしょう。

 一方で、財源の根拠のない議論を100%認めたら、「言ったもの勝ち」で、消費税ゼロ、所得税大幅減税、年金受給額増額、医療・教育無償化と、実現性のない、耳障りのよい提案主張をする政党が、躍進しかねません。

 政策提案と財源論を両立させる方法を考えてみます。

  それは、「全事業の優先順位の一覧表」です。
 イメージとして、全事業(と予算)の一覧表です。
さらに、事業を優先度A,B,C,D,E くらいのカテゴリーに区分されます。
 最後に総予算額が、合計されています。

 優先度は、「人命・権利保護」「安全」「投資効果」「無くした場合の影響」といった感じの指標で、総合評価され確定されます。

 新たな政策提案は、カテゴリーAのリストに入ります。
 予算総額が不変の前提の場合、優先度の一番低い、カテゴリーEの事業が、廃止や減額されていく形になります。
 そのため、財源論争の必要はありません。
 ※総予算枠をいくらにするかは、別の議論になります。

 従来のマニュフェストに、より具体性と財源根拠を持たせたものと言えるでしょう。

 統一フォーマットで、各政権が事業(予算)一覧表を公表し、野党もそれぞれの考える表を作成すれば、政策論争も意味のあるものになると思います。

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