大学無償化について考察

 ドイツ、フランスなどのヨーロッパの大陸国は、大学無償化している国が多いことを理由に、日本において、大学無償化希望の声がある。
 もし日本が大学無償化する場合、どのような制度にすべきなのか考察してみる。

①大学無償化している国に言えること

大学無償化している国は、ヨーロッパの大陸国で、高福祉、高税率な国が多い。
 無償化されているのは、公立大学である。※留学生も無料だったりする。
 ただ、施設費等はかかるようだ。
 私立大学は有料のようです。

 現状、大学無償化している国々の大学進学率は意外と低く、ドイツで大体50%程度、スイスはもっと低い(20%程度)。
 ※経済的にも結構成功している国が多く、大学進学率と経済発展は直接因果はないようだ。
 
 なぜ、大学進学率が低いかと言えば、一つは、階級社会で、12歳位に将来のコース(大学進学 or 労働者(職人・技能者含む))の選択が迫られる学制になっている。
 また、大学入学時年齢は20代前半が平均で、入学のハードルは低いが、卒業は難しい(中退率は25%程度)。そのためハードな勉強をする必要があり、バイトやサークル、遊びを楽しむ場ではない。

 そのため、労働時間が短く、医療も教育も無償で年金も充実した高福祉国家では、大学で勉強に苦労するより、労働者になって気楽に暮らすことが、幸せと考える層が多くてもおかしくないと思う。
 また、職人意識が強い国が多く、職人になった方が稼げる場合も多い
 まとめると、大学無償な国は、「勉強がハード」なので、本当に学習意欲が高い人達が進学する形になる。

②大学有償な国(学費の高い国)

英米系の国、英国、アメリカ、イギリス、オーストラリア等は、大学学費は、一般的に高額(日本の数倍するケースも)である傾向が強い。
 また、大学入学時年齢は20代前半が平均(30代も多い)で、入学のハードルは低いが、卒業は難しい(中退率は25%程度)ため、勉強はハードである。

 高額学費で、中退リスクも高いのであれば、大学進学率は低くなりそうに思えるが、実態は、アメリカ(80%)、オーストラリア(100%?)と高い。
 ※イギリスは30~40%と低い、階級社会だからか?
 
 その理由として、まず、英語は世界の主流言語であり、英語ネイティブ層は、就職や起業のビジネスの機会と選択肢が多いためと考えられる。

 大学卒業により「学費」をはるかに上回る将来所得が見込めるのであれば、高額な金額が自己負担でも大学進学する層が多くなると考えられる。

 まとめると、大学有料(高額)な国は、自己責任的傾向が強い一方で、成功する機会も多い。そのため「高額学費かつ勉強ハード」でも大学に行く人(20代以上で)が多いと思われる。
 この形は、勉強のモチベーションはかなり高いと考えられる。

③もし日本が、現状のまま全大学無償化を導入したらどうなるか

日本の現状を以下にまとめると
・大学進学率50%程度
・国公立大学生比率20%程度
・学費は有料(私立は高額)
・大学を選ばなければ誰でも進学可能(60%は定員割れ、推薦入学率50%以上)
・大学入学年齢18歳(浪人率15%程度)
・大体が卒業できる(中退率10%以下)
 
 上記の状況で、もし全大学学費が無償化された場合は、大学進学率は高くなり、大学生総数が現状300→400万人に増大したとして、一人100万/年の学費を国が負担した場合、4兆円/年の予算が必要になる。
 また、無償な上、勉強せずに大学進学できて(選ばなければ)、卒業も容易(中退率10%以下)となれば、大学の娯楽施設化が進む可能性が高いと思います。

 4兆円の血税の使い道としては、効果的ではなさそうです。

 ※仮に、4兆円を子供手当で、未成年に一律支給すれば、子供一人に年30万円の支給が可能、その方が少子化や教育投資として効果が高いと思われる。

④日本が大学無償化するとしたら有効な方策

 もし、日本が大学無償化をするなら、まずは、大学をハードな勉強の場とする必要があると思う。さらに、仮に中退してしまった人も、何度でもやり直しができる。大学と社会を行き来して、自分のキャリアを試行錯誤できるような制度の方が、大学教育の質は向上すると思います。
 具体的には以下の方策が考えられる。

・国公立大学の定員を大幅に増やして無償化(あるいは低額化)
・私立大学は有料 奨学金(ローンを含む)を充実
・経営が成り立たない私立大学は、公立化または統廃合
・大学入学のハードルを下げる一方、卒業をハードにする(中退率が30%になるくらい)
・休学、復学、転学部、転入学がしやすい制度(科目単位認定の共通化など)

 でも反対が多くて無理そうですね。

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