現状で、地球上の陸地の1/4、約3600万㎢が砂漠であり、そのうち900万㎢が、これまでの人間活動により砂漠化した面積だそうです。
ちなみに900万㎢は、アメリカの国土面積に匹敵する面積になり、その面積を人間が砂漠にしてしまったことになります。
世界の農地面積1250万㎢であることが考えると、砂漠を再緑化することで、食糧増産のポテンシャルは、大きいことが分かります。
また、現在進行形で年間6,000㎢のペースで砂漠化が進んでいることから、毎年、東京都の三倍の面積が砂漠になっている計算です。
人間活動による砂漠化の過程は、
樹木伐採等、農地開発 → 表土の流出 → 地下水くみ上げ塩害 → 砂漠・不毛化
という感じで、そこに温暖化等の要素が加速している状況にあります。
砂漠緑化対策としての「植林」は、すでに降雨減少、表土流出、塩害等の要素により不毛化してしまった土地に行っても、効果は薄いと思います。
また、地下水くみ上げによる緑化も、いずれ地下水が枯渇するか、塩害等の問題が出てくるので永続的ではないと思います。
砂漠地帯でも、雨季には、ある程度の降雨量がある地域も結構多い(砂漠の洪水も結構ある)ので、砂漠化する原因として、雨水等の表面水が地域に滞留せず、海に流出してしまうことにあると思います。
つまり、砂漠緑化していくカギは、地域に滞留する表面水量を増やし、湿潤な状態をキープすることだと思います。
表面水を貯留する方法として、ダムや溜め池が考えられますが、技術的に難しく、計画設計も大変で、工費と工期も大きく、場所の制約も大きく、維持管理も大変なので、気軽に、どこでも作れるわけではない点が課題です。
メンテフリーで表面水を滞留させる工法として「地下ダム」という、枯れた川に地下にダムを作り、埋め戻し、地下水を涵養するやり方がありますが、これらも、堤高が大きいと意外と制約が大きいです。
一方、ダムを作る動物として「ビーバー」が知られています。
北米の中西部等の乾燥地帯において、小さな沢にビーバーが住み着くと、砂漠に近かった地域の緑化が進んでいくそうです。
緑化の過程は、まず、ビーバーが住み着くと、小さな沢だった場所がビーバーダム(湖沼)が連続していくような感じになります。
すると、地下水が涵養され、周辺地域に植物が生えてきます。その植物をビーバーや他の草食植物が食べて糞をすることによって表土が回復し、さらに緑化が進むというサイクルを繰り返し、川に魚類も増えといった感じで生物の多様化が促進されるそうです。
こうしたメカニズムを砂漠の緑化において活用できるかもしれません。
※といっても、ビーバーを放つわけではない
アイデアを簡単に言えば、高さ1mほどの超小型のダム(アースダム)を谷筋に複数作っていくことが考えられます。
条件として水生生物や利水への配慮として、以下の二つが必要です。
・乾季には枯れている谷筋であること(いわゆるワジと呼ばれるもの)
・下流域で利水されていないこと
該当箇所は、例えば、北アフリカ、中東にかけて、衛星画像を見ると、海岸まで乾燥地帯と枯れた谷筋が広がっている無住地域が膨大にあります。
こうした所に、河口部から超小型ダムを順に作っていけば、利水等への影響は考えにくいです。
構造断面は、高さ1m、根入れ0.5m、天端幅1m、底面幅4mくらいの安定した台形断面で、現地土を簡単なセメント改良したもので構築します。(アースダム)
水門等の構造部は一切なし、越流部を少し切り下げて、吐水部として多少念入りにセメントで固める感じで、基本メンテナンスフリーで、多少の漏水は、無問題とします。
一般的にダムは、適地選定や計画・設計に膨大な時間とコストが掛かるが、この構造なら、
基礎の地質調査はほぼ不要(泥質地を避けるくらい)で、計画、設計も大雑把な地形図から現地で選定する程度で手間はほぼ無いと思います。
この構造なら現地にある汎用的な施工機械(バックホウ・ブルトーザー、ローラーなど)で、1日に数百メートルは構築できると思います。
こうした小型ダムを谷筋に複数作っていくと、乾季に枯れた谷筋だったところが、雨季に溜まってできた「湖沼」が連続していく感じの地域になります。
すると周囲の地下水位が上昇し、その周辺に植林等を行っていくことで、地域全体の緑化が進みます。
長年経つと、恐らく、小型ダムは堆積物で埋設してしまうと思いますが、その場合、そのまま地下ダムとして湛水機能があるので、放置してもよいし、堆積物は、栄養豊富なので、周辺地域の緑化に利用する手もあります。
平坦な砂漠地域においては、ダムを平面的(上空から)に見て、大きな馬蹄形(U型)に作る手もあります。
さらに、馬蹄形をつなげて、地域全体を魚鱗状に覆っていく方法も考えられます。イメージとして雨季には地域が水田地帯のような感じになり、長期間滞水する湿地帯になります。
そうなると、植生もだいぶ復活してくると思います。
この方法の利点は、低コスト、メンテフリーで、現地にある業者、施工機械、人材、材料で施工可能な点であります。
もし、1パーティーで超小型ダム堤長が日300mを施工できるなら、乾季のみ年150日稼働で、堤長45kmが施工可能になります。10パーティーでも、堤長450kmが施工可能で、ある地域をカバーできるくらいの規模であるが、工費は数億円程度でできると思います。
この方法の難しいのは、無住地域で行われることもあり、直接的な経済効果が読めないところです。
実際、地下水が復活し、緑化され牧草や果樹やナッツ等の換金作物を植林できれば、経済効果が見込めるとは思えるので、どこかで実験的にやってみて、効果を検証して欲しいものです。